オバケの駐在所
「喰っちまやいいか。
なぁ、おい。
どうせお前はこの先
生きていけないだろう?
わしの血となり
肉となり命の糧になれ。」

そしてその子の
手を取って
持ちあげようとするが
ある事に気づく。
体よりも大きな服を
まとっていたため
わからなかったが
腕が1つないのだ。

「……カタワか。
まあ珍しい事でも
ないが。」

子供の倍ほどはある
わしの太い手も
二の腕辺りから
片方なくなっていた。
それは夕方
眠りから覚めた時に
気づいた事。
1000年以上前に
京で人間共に
切り落とされてからは
くっつけても
度々こうして
勝手にどこかへ
行ってしまうように
なったのだ。

癒える事のない
傷を受けた腕が
何を求めて
さ迷うのかは不明だ。

「ごろつきが多い
この森に捨てられたのが
運の尽きだったな。」
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