オバケの駐在所
最初は何のことか
いまいち理解できなかったが、
やがて思考が
その答えを導き出すのに
たいして時間は
かからなかった。

「……ぷっ、アハハハハ!
まさかそんな事とは!
俺はてっきり!アハハハハ!」

「大丈夫かい?
ウサちゃん……。」

怪訝な顔をする女の子。
どうやら人の暮らしの中では
ごく当たり前の話らしい。

「ほら、月のウサギよりも
向こうのウサちゃん達と
餅をつこう。
みんな待ってるよ!
君の大好きな
キャルロットお姉さんもね」

「だーれが」

今宵の月はお餅みたいに
まんまるくて
綺麗な金色をしている。

それに照らされ
ウサギやオバケ達は
気の赴くままに騒ぎ餅をつく。

……しかし、俺は確かに
視線を感じた気がしたんだが。
あれは何だったんだ?

「……ひっく」

と、ふいに空が
酔っぱらったような声を
出した。

もう一度夜空を見上げても、
そこには月以外に何もない。
ぶ厚い雲が
広がっているだけだ。

「……あ?」

だけどそれは
思えば奇妙な事だ。

あれだけ雲が広がっているのに
月が見えるものか?
< 327 / 566 >

この作品をシェア

pagetop