なんでも屋 神…第二幕
「前に初めて見た時は、只の面白い奴だとしか思わなかったが…今の動作とその揺るがない眼で確信したよ。あんた、夜恵(やえ)の息子だろう?」



夜恵?お袋の名前は朱鷺恵(ときえ)だ。



だが神堂の言葉に、脇に居る女性も起き上がり小法師のようにゆっくりと首を振っている。



「俺のお袋は朱鷺恵ですけど、何かの間違いでは…。」



言い掛けた途中から、鷲鼻を歪ませた神堂の笑い声に、俺の声はかき消された。



獣の雄叫びのような笑い声に、室内が包まれる。



脇に居る兄ぃに目配せしても、兄ぃすら何で神堂が笑っているのかを掴めずにいた。



…兄ぃも俺のお袋の名前を知っているはずだから、神堂の真意が分からずにいるみたいだ。



「いや、ならば間違いは無い。そうか…夜恵は昔の事を話していないのか。それなら儂も話す訳にはいかないな。そういう事ならば、先ずは乾杯でもしよう。」
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