なんでも屋 神…第二幕
…逃げられたのだろうか。



それとも一階に居るのだろうか…己の思惑を疑うもう一人の自分が居る。



洞察力に全ての神経を集中している為、自然と身体が前屈みになり、背筋を思い切り伸ばしたい衝動に駆られる。



一階に右足を下ろそうとした瞬間、畳の上をゴムが擦る歪な音が鼓膜を貫く。



思わずノリの入っていった和室を覗き込んだ。




…見た事が無い長身細身の男が、一定の距離を保ってノリと向かい合っている。



体格だけで見れば、圧倒的にノリが不利だ…。




俺の姿を瞳に映した長身の男。細身ながらも張り詰めた筋肉の線、首筋に住み着いたような蠍の彫り物が、怪しげな雰囲気を醸し出している。



ノリはと言えば、手にしていたはずのグロッグを持っておらず、探してみればグロッグは部屋の隅に転がっていた。
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