なんでも屋 神…第二幕
左の奥に目を移すと、壁の中二階部分にはバルコニーのようなスペースが有り、その中では両腕をフルに使ってスクラッチしているDJの姿。



その手前には白い鉄の扉が有り、その有り余る巨漢を黒いタキシードに包んだ黒服が二人。恐らく彼処がVIPルームだろう。



ライムを吐いているラッパーの横で、淫靡な雰囲気を醸し出している、女性ダンサーに釘付けになっている一葉の手を引き歩き出す。



俺でも見上げなければならない黒服に指輪を見せ、奏を呼んでくれと伝えて扉の奥に進んでいく。



床の上には深紅の絨毯が敷かれ、向き合うように並べられた十人掛け本革ベージュのソファの間には、強化ガラスのテーブルが同長で置かれてある。



コンクリート剥き出しの室内は、特有の無機質感が漂い、フロアの様子は完全にシャットダウンされた防音設備。



急に静かになりすぎて、耳鳴りが止んでくれない。
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