なんでも屋 神…第二幕
俺が飲み干したグラスの中では、蛍光灯の熱で丸くなった氷がバランスを崩し、グラスにぶつかった音がカランと響いた。



「俺はこんな仕事をしてるからな、若い奴等と接する事が多いんだ。まぁ、俺等もまだまだ若いけどな。」



松の墓参りに行った時から、いや、恐らくその前から奏は一人きりで、ずっと頭を悩ませていたのだろう。



「神、今の若い奴等ってどう思う?俺から見れば、何奴も此奴も死んだ魚みたいな目しやがってよ…俺には、見えもしない相手と競争してるように見えてな…それが一番悲しいよ。」



奏の言いたい事は何となく理解出来た。道路で遊べば道交法(道路交通法)で取り締まられ、派手に喧嘩しようと思えば凶器準備集合罪、夜に遊ぼうとすれば深夜徘徊に補導、最後は風営法で遊び場さえ奪われる。



そんな事をしたいと思う奴等に、明確な理由や主張はないかもしれないが、皆己を解放出来る場所を探しているんだ。



それはストレス発散でも、新たな自分の世界を見つけて何かを得たいと思う気持ちでも良い。



だが、若い奴等や子供達を雁字搦めにしてから、世間は自己主張や個性を伸ばすのは自由だと言う…そんな腐った世間に、この国に、俺は憤りを感じていた。
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