赤い愉楽
無造作に閉じられるドア。


そして立ち尽くす怜奈。


ここまで来ても何もわからない。
無力な自分に絶望する怜奈。


涙が一滴。



下を向いて雑居ビルの階段を下りていく。


この大きな街の中から
犯人を見つけ出す。


しかも怜奈一人で。



無理に決まっているという思いが
心の中に広がっていく。


警察ですら見つけることができないのに
怜奈が犯人を見つけることができる確率なんて


万に一つ。


あの平野という刑事の前で
大見得を切っては見たものの


実際犯人を突き止めるなんて
雲をつかむようなものだと


思い知らされはじめていた怜奈だった。
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