赤い愉楽

焼けた鉄棒を胸元に押し当てられた怜奈は

吐息を洩らす。





滴り落ちる汗。





焼け焦げた服のいやなにおい。

怜奈の両目からこぼれおちる涙。





焦げた服がぼろぼろになり

怜奈の素肌が透けて見える。





「はは…その白い肌に

刻印を付けてやろうか?





奴の仲間にふさわしい

悪魔の刻印を刻んでやるよ…」





暗い部屋によどんだ空気。





怜奈の透き通るような白い肌だけが

暗い部屋の中にある明るい色。





「や、やめて…」





怜奈が小さな声で訴えるが

もちろんその願いは聞いてくれそうにもない。





「命乞いをしろ。もっとするんだ。

悲しい顔をもっとしろ!



エミが受けた苦しみはこんなもんじゃない。





まずはお前を血祭りに上げて

ワタヌキに見せつけてやろう」





クドーは高笑いをする。



そんな姿を寒々と見つめていた怜奈の顔に

またもや平手打ちを飛ばすクドー。





「うう…」





髪の毛を振り乱し

うつむく怜奈。





「まだだ」





クドーは唇を歪めて笑う。





「エミは生きながら穴に放り込まれて埋められた」





乱暴に髪の毛をつかんで怜奈の顔を引き起こすクドー。





怜奈の首筋に熱く焼けた鉄棒を近づける。





「じゃあお前は生きたまま

首を焼き切ってやるよ」





復讐に狂ったクドーは

もはや人間の眼をしていなかった。





服はビリビリに破れ

残された下着が



かろうじて怜奈を守っている。





「死ね」





クドーは短くつぶやいて

目にもとまらぬ速さで





鉄棒を振り上げた。



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