赤い愉楽
怜奈を抱き寄せる奥田の腕に
少し力が入る。


奥田の腕に身を任せる怜奈。



2人の唇が今重なり合う。


「まって…」


吐息交じりの怜奈の声。


怜奈の指がすっと伸びて
夜空を指し示す。


「何?」


短く奥田が聞き返す。


怜奈の指の先には
夜空の星が広がっている。


首を振り
奥田の腕を振りほどく怜奈。


名残惜しそうな奥田の腕。



「ダメよ…空で主人が見てるから」



奥田はうなずいて空を見上げる。



夜の空は何も語らず


謎だけを残して
そこに横たわっていた。
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