赤い愉楽
確かに椅子に座る平野は
雑然としたオフィスに居座る自縛霊の様。
ロマンのかけらもない平野が
中村巡査に声をかける。
「筆跡鑑定の結果は出ましたか?」
その問いに怜奈は無言でうなずき
ファイルを平野の前に差し出す。
「4月1日は奥田という文字は
間違いなく殺された旦那さんが書いたものですね。
でもそんな事調べてどうするんですか?
ある意味わかりきってるじゃないですか」
平野は少しにやりとした後
中村巡査に問いかける。
「中村巡査。報告書に
鑑定士の私見が書かれていますよね?」
怪訝そうな中村巡査が
ファイルに目を通す。
「私はね。その私見に
大変興味があるんですよ。
中村巡査。読みあげてもらえますか?」