ポケットに“チョコレート”2つ。
本の世界に浸ってしまえば、些細なざわめきなど気にならない、特別な居場所。


とても居心地が良かった。


今思えば…アイツとも図書館ですれ違っていたかもしれない。


「先輩が大学生になったから、気兼ねなく会えますね。今日もラブラブしましょぉね」


「………」


言葉に詰まる。


「今日のお昼はパスタにして欲しいですぅ。あ、トマトと麺を持って来たんですよ」


「…はいはい」


「クマプーは元気にしてますかぁ?」


「…してるんじゃない」


「クマプーを一葉だと思って、ギュウッしたり、チューしてもいいですからねっ!!」


「ばっ…馬鹿言えっ」


駅からアパートまでの距離、永遠と一葉が話し続ける。


鬱陶しかった纏まりも、今では慣れて…一葉が帰ってしまうと急に寂しくなる。


電車で一時間のこの距離が、余計にそうさせるのかもしれないが…。


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