茜ヶ久保マリネの若気の至り
…500年前、この街は『禁都市・天空宮』と呼ばれていた。

読んで字の如く禁じられた都市。

何を禁じているのか。

それは言わずともわかるだろう。

暴虐に縁のない者達には、まさしく天空宮市は禁断の都市だった。

一歩足を踏み入れた瞬間から、この天空宮市でどんな扱いを受けようと文句は言えない。

この街がそんな謂れを受けるようになったのには、当時二十歳だった私にも責任があった。

この天空宮市…特に港周辺では、私達人魚を含めた勢力が抗争を繰り返していた。

天空宮近海を巡る覇権争い。

抗争といっても、人間同士ではなく、海を住処とする魔物達の殺し合いだ。

苛酷な自然環境で生きている海の魔物同士の戦争。

人間や亜人種、陸の魔物には介入できないほど、その戦いは熾烈なものだった。

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