茜ヶ久保マリネの若気の至り
刃を構えた私はサハギン達に向き直る。

カツ、という革のブーツの音。

刹那!

「うひぃ!」

「ぎゃぎィ!」

奇声とも断末魔ともつかない叫び声を上げて、サハギン達は瞬時に細切れと化した。

私自身は剣術の心得はない。

そもそも人魚というのは魔物とはいえ亜人に近い存在だ。

半人半魚の姿で類稀な美貌を誇り、その美しさで他者を魅了する。

だがそれだけ。

人魚は戦闘に適した能力には秀でていないし、好戦的な性質でもない。

唯一戦うとすれば、自らの愛する海が、不当な暴虐によって侵された時だけ。

私の手にする魔刀・海刀神は、そんな有事の際に振るう為に編み出された魔法なのだ。

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