茜ヶ久保マリネの若気の至り
キャイキャイと黄色い歓声を上げながら、彼女らは『一生の思い出になります』だの『憧れのマリネさんとの写真なんて夢みたいです』だのと興奮気味にまくし立てる。

そう。

ほんの500年前なら夢のような話だ。

天空宮の茜ヶ久保マリネと言えば、人魚の女王であると同時に、最強の水属性魔法の使い手として、世界中から畏怖されていた存在なのだ。

それが今では天空宮市の観光コースに私の屋敷が加えられ、干潮の時には日に数十人の観光客が訪れる。

挙句の果てには気安く記念撮影にまで応じる始末。

やれやれ、丸くなったものね。

手を振りながら屋敷を出て行く女学生を見送りながら、私は苦笑いするのだった。

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