茜ヶ久保マリネの若気の至り
奇妙な得物だった。

長さからすれば刀剣。

しかし鍔も、柄も、鞘もない。

刀剣ならば当然ある筈の装飾の類が一切なかった。

言うなれば刀身だけ。

鍛冶師が鍛えた刃を、そのまま武器として使用しているような形状だった。

その得物が、私の海刀神の斬撃を正面から受け止めている。

ナマクラならば受け太刀した瞬間に刃こぼれするか、刀身そのものがへし折られるか。

海刀神はそれ程の魔力を帯びた魔刀なのだ。

それを真っ向から打ち合わせてヒビ一つ入らないとなると、リヴァイアサンの得物は相当な業物という事になる。

が。

「腕は立っても刀剣の造詣には疎いと見えるね、茜ヶ久保マリネ」

寒気がするような、口端を釣り上げただけの笑みを浮かべて。

リヴァイアサンは私と鍔迫り合いを演じた。

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