茜ヶ久保マリネの若気の至り
「いいかいマリネ」

頭角を肩に担ぎ、彼は私を見据える。

「僕は疑われるのは嫌いだ。謂れなき嫌疑をかけられて面倒に巻き込まれるのもね。もう一度言う。サハギンをけしかけたのは僕じゃない」

「だったら誰があの侮蔑すべき雑魚どもを操って、私達人魚の住処にちょっかい出しているっていうの?」

飛び散った破片が所々体をかすめていった。

肌に残るかすり傷を軽く指でなぞりながら、私はユラリと海刀神を構える。

「あんたも一端の海竜の王でしょ?小賢しい自分の策くらい、男らしく認めなさいな」

「……」

ギシリと。

軋む音をさせて、リヴァイアサンは頭角の尖端を私に向ける。

「僕は二度も警告した。聞き入れなかったのはそちらだ」

頭角の切っ先から根元まで、撫で上げるように指を滑らせた後、彼は両手持ちに構えを変えた。

「最早人魚族を根絶やしにしたとしても、責められる謂れはない」

< 30 / 101 >

この作品をシェア

pagetop