茜ヶ久保マリネの若気の至り
「フン」

私を嘲笑うかのように、クラーケンは鼻を鳴らす。

「まずは一口食って、人魚の肉の効能というものを確認してみるとするか」

腹同様にだぶついた肉付きのいい背中をこちらに向け、クラーケンは牢屋から出て行く。

いっそ一思いに殺せばいいものを、嬲るとは…。

どこまでも性根の腐った男だった。

そのクラーケンに。

「あのぉ…クラーケン様」

鉄格子の外で見ていたサハギン達が声をかける。

「俺達にも是非…一口、一口だけでいいんです。茜ヶ久保マリネの肉を食らう事をお許しいただけませんか?」

「フム…」

立ち止まって振り返り、私とサハギンの顔を見比べるクラーケン。

その脂ぎった顔が、愉悦に歪んだ。

「そうだな…お前達もこの女に鬱憤がたまっておる事だろう…一口だけ許す」

クラーケンは、私をとことんまで慰み者にするつもりらしかった。

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