茜ヶ久保マリネの若気の至り
傷の痛みと体力の消耗があるとはいえ、私の間合いに容易く侵入するとは。

やはりリヴァイアサン、神と並び称される海竜王。

しかしそれよりも。

「気安く私の体に触れないで」

リヴァイアサンに腰を抱かれたまま、私は彼をキッと睨んだ。

「おいおい…あのでっぷり肥え太ったクラーケンに肌を触れさせておいて、僕にはダメって事はないだろう?」

一部始終見ていたの?

なのにすぐに助けないとは、悪趣味な男ね。

「このまま魅了(チャーム)の魔法で君を虜にして、無理矢理に謝罪の言葉を言わせようか?」

リヴァイアサンの蒼い瞳に魔力の輝きがこもる。

「そんなもの…抵抗(レジスト)してやるわ」

私も瞳に魔力をこめるものの、疲労しているのかうまくいかない。

「やれやれ…強情だね、君は」

さしもの海竜王も、気の強い私には手を焼いているようだった。

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