貴方が好きなの

「ここまででいいよ」


そう言って私は立ち止まった。


家が遠く先の方に見える。


これ以上中川と一緒にいたくない。


「ここまでで、って言われても。黒川、って表札、見当たらないけど?俺、送るって言ったじゃん」


「家まで、とは言ってないんじゃない?……家見えてるから、中川、帰りなよ」


街灯の明かりが淋しい。


「はぁ……」


中川がため息をついた。


私だってため息つきたい。






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