記憶 ―惑星の黙示録―


「…ぁ、ごめんね?この子『犬』って言われると、怒るの…」

ハルカちゃんは、そう申し訳なさそうに肩をすくめて笑った。


…は?

笑い事じゃないし。
怖いし!
だって、犬だし!


リュウは未だに逆さまの状態で、クスクスと静かに笑っていた。


「奈央は、言葉が通じないから怖いんだよ。相手が何考えてるか分からないモノは怖い。嫌い。」

違う…?と私を見た。

うっ…

返す言葉もない。
その通りだ。

でも言葉に出すのは悔しくて、
私は黙ったまま犬を見据えていた。


どうせ…
私が思っている事が筒抜けの世界なわけで。


「…あははっ…、その通りだってさ。」

リュウは私の予想通り、
ハルカちゃんにそう告げた。


「…そっかぁ。じゃあ、仕方ないね?この子の名前は、コン。犬じゃなくて、『犬竜』なんだよ?」

ハルカちゃんの横で、その犬竜とやらがフンッと鼻息をあらげる。

私に背中を向けると、
そこには、コウモリの様な黒い翼が在った。


「…へ…?」

犬竜はその翼をパタパタと羽ばたかせると、宙に浮いて見せた。

よく見ると、
頭には小さな角。

私の知らない生き物だった。

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