Alice Doll
「なにがそんなに嬉しいんだい?」
「あ、奏様」
「奏さん」
谷田部と由衣が同時に反応を示す。いつの間にセリアと話を終えたのだろう。奏とセリアは、ゆったりとした笑みを浮かべて由衣たちの後方に立っていた。
「あ、えっと……」
「由衣と秘密の約束をしたんっすよ!」
由衣が返答に困っているのをよそに、谷田部は仁王立ちで言い放つ。
何だか、その姿が面白可笑しくて、由衣はついぷっと吹き出してしまった。
それは奏も同じだったらしく、くすくす笑い声を漏らしている。
当の笑われている本人は何がおかしかったのか解らず、一人当惑した表情を浮かべていた。
*****
「では由衣さん、申し訳ないんだがつい先ほど、急用が入ってしまってね」
奏の言葉で由衣は察する。腕時計にちらりと目をやると、五時半とこちらからお暇してもおかしくない時間を指している。
もうそんなに経っていたのかと驚くとともに、この非現実的な空間にもう少し浸っていたいという想いが押し寄せる。
「ユイ」
しゅんとしていた由衣に声をかけたのはノエルだった。突然の登場に由衣は目を見開くが、ノエルは淡々とした表情のまま手に持っていたものをぐい、と差し出す。
「これは?」
「テリアプラント」
「テリア……プラント?」
「そう。花の、名前」
それは薄い桃色をした花だった。見ようによっては花弁は半透明になっているようにも見える。
巻貝のような外見をしたその花は、僅かに甘い香りを漂わせている。しかし、そのような花の名前は聞いたこともない。
「あ、奏様」
「奏さん」
谷田部と由衣が同時に反応を示す。いつの間にセリアと話を終えたのだろう。奏とセリアは、ゆったりとした笑みを浮かべて由衣たちの後方に立っていた。
「あ、えっと……」
「由衣と秘密の約束をしたんっすよ!」
由衣が返答に困っているのをよそに、谷田部は仁王立ちで言い放つ。
何だか、その姿が面白可笑しくて、由衣はついぷっと吹き出してしまった。
それは奏も同じだったらしく、くすくす笑い声を漏らしている。
当の笑われている本人は何がおかしかったのか解らず、一人当惑した表情を浮かべていた。
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「では由衣さん、申し訳ないんだがつい先ほど、急用が入ってしまってね」
奏の言葉で由衣は察する。腕時計にちらりと目をやると、五時半とこちらからお暇してもおかしくない時間を指している。
もうそんなに経っていたのかと驚くとともに、この非現実的な空間にもう少し浸っていたいという想いが押し寄せる。
「ユイ」
しゅんとしていた由衣に声をかけたのはノエルだった。突然の登場に由衣は目を見開くが、ノエルは淡々とした表情のまま手に持っていたものをぐい、と差し出す。
「これは?」
「テリアプラント」
「テリア……プラント?」
「そう。花の、名前」
それは薄い桃色をした花だった。見ようによっては花弁は半透明になっているようにも見える。
巻貝のような外見をしたその花は、僅かに甘い香りを漂わせている。しかし、そのような花の名前は聞いたこともない。
