プリンセスの条件
無言だから怖い。
だけど、よっぽど煩くしてしまったらしい。
「す、すみません」と何度も頭を下げると、バタンと大きな音をさせて隣の住人は玄関を閉めた。
「どうしてくれんだよ……。お前のせいでオレ、ご近所評判最悪じゃん」
翔太が頭を抱えて項垂れる。
「何よ!翔太が早く家に入れてくれればよかったのにッ!!」
「ホントにワガママ姫だな、お前は」
「素直って言って下さーい」
「あぁ!もういい!!また睨まれんだろ?早く入れよ」
けっきょく翔太はあたしに折れるしかないのだ。
「ありがとう翔太!そんな優しい翔太が大好きッ」
「あーはいはい」
大好きというのは本当のこと。
それは恋ではないけれど、あたしのことなら何でも知ってくれてる翔太の前では、いつも自然体なあたしでいられる。
だから翔太と過ごす時間はとても心地よい。
「翔太が彼氏だったらうまくいくのかなぁ」
「ゲッ、なんだよその不吉な例え。勘弁してくれよ」
本当に迷惑そうな顔をする翔太に、少し頭にきた。
「何よ!あたしこれでもけっこうモテるんだからね!?」