プリンセスの条件
周りはマイを『魔性の女』なんて言うけれど、本当のマイは魔性の欠片もない、普通の女の子。
少し惚れっぽい性格であることは認めるけれど。
いつだって付き合った男には嘘偽りなく、体当たりでぶつかっていた。
だけどそのことを、周りは誰も知らない。
『いいよねー、モテる女は。男つまみ放題で』
マイが男と別れる度、噂と共について回る陰口。
だけどそれは大きな間違いだ。
確かにマイはモテるけれど、それはただの結果。
モテる女であり続けるための努力をマイは惜しまない。
外見を磨くことはもちろん、内面磨きだって怠らない。
『あたし、ハッピーなお姫様になりたいから』
なんて、21にもなってドリーミーすぎるセリフをサラッとオレの前でだけ口にして。
『彼氏があたしのことを誰に紹介しても恥ずかしくない女になる』
なんて、“ヤマトナデシコ魂を持ったお姫様になる”とかワケ分からないことを言って。
茶道や華道、料理教室なんかに行きながら、マイ自身が描く理想の女に近づくよう、陰ながら努力を続けている。
“今”の自分に満足なんてしない。
常に上に向かって歩み続ける女の子。
そんなマイが輝くのも、マイに引き寄せられる男が後を立たないのも、オレに言わせれば全部当たり前なんだ。
そして、ずっと惹きつけられたままのオレも……。