プリンセスの条件

週末は翔太と過ごすために時間を空けておきたかったのに、平日あんなに働いても、バイト代は家賃程度にしかならず、あたしは週末もフルに働かなければならなくなった。


翔太と早く一緒に過ごすためにと頑張っていたはずなのに、翔太との時間が逆にどんどん減っていく。


おまけに、そんな生活を続けていたから大学の講義なんかほとんど頭に入らず、成績は下がっていく一方だった。


バイト漬けの生活を始めて1ヶ月。


とうとうあたしは、両親に土下座をして謝ることに……。


その時、父に「案外早かったな」と言われたけれど、本当にその通りなので返す言葉もなかった。


だけどそれでも「翔太と離れたくない」と泣きじゃくるあたしに、とうとう両親が観念して、翔太と翔太の両親を呼んで家族会議が開かれた。


その結果。


翔太とあたしの結婚の意志が揺るがないものだと両家に認められ、同棲することが許されたのだ。


翔太の両親は「早くマイちゃんを娘にしたいわ」なんて言ってくれたけれど、あたしの両親と翔太は、完全に呆れ果てて物も言えない状態だった。


だけど翔太との同棲生活は、今思い出してもとても幸せだったと思う。


毎日一緒に朝ごはんを食べて、一緒に大学に出かけて、夕食の買い物なんかも行ったり、一緒に夕食を作ったり。


夜は同じベッドで抱きしめあって眠って……。


今までも十分幸せだったけれど、これからは本当の意味であたしたちは幸せになる。



「マイ、行こうか」

「うん!」


差し出されたこの手が、あたしを世界一幸せなお姫様にしてくれる。


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