ホタル
「すみません、」
不意に後ろから声をかけられて、あたしは我を取り戻す。
後ろには、あたしが入り口にいるせいで通れないサラリーマンが立っていた。
「あ、すみません、」
急いで入り口から少しずれて、思い出した様に落ちたビニール袋を拾った。
いぶかしげにあたし達を見つめながら、彼は駐車場に止めた車に乗り込んでいった。
彼の車が遠ざかり、排気ガスだけが辺りに満ちる。
遠ざかるエンジン音が消えていくにつれて、あたし達の間に現実が戻ってくる。
一瞬逡巡したが、目を伏せたまま裕太が立ち上がった。
あたしの視線ははそれを追う。
…背、伸びた。
キャップの下から微かに見える口許が、どこか大人びた気がする。
意を決した様に顔を上げた裕太と、あたしの視線がかち合う。
たがが外れた様に、あたしの心臓は大きく跳ねた。
この感じ、この息苦しさを、あたしは求めてた気がする。
ずっと。
離れてた、この三年間。