ホタル
……………
「…コーヒー、淹れたから」
カチャンと陶器とテーブルが触れる音が、狭い部屋に響いた。
消えそうな声で、「ありがと」と呟く裕太。
無理矢理な笑顔が胸を潰す。
あたしはそのまま、裕太の隣に腰かけた。
「…髪」
「え?」
「切ったんだね。…黒くなってる」
あたしは自分の髪を触って、曖昧な笑顔を返した。
大学に入ってすぐに、あたしは髪をバッサリ切った。もちろん、想いを全て断ち切るために。それからずっと、黒のワンレンだった。
裕太はあたしの髪に手を伸ばしかけて、そして、止めた。
二人口を閉ざす。他愛ない会話を繰り返す気力は、多分なかった。
しんとし静まり返った部屋。無音の音が、小さく耳に響く。
「…冬、だった」