ホタル
沈黙で満たされた部屋に、裕太の押し出した様な声が現れた。顔を上げて裕太を見つめる。
裕太はただ、コーヒーカップに目を向けたままで。
ぽっかり空いた空間の様な、そんな瞳で。
「旅行に、行ったんだ。中川と…他の、仲いい友達と。そこの雪山で、遭難した女の子を助けようとして…そのまま、中川は帰って来なかった」
段々と声が震えてくる裕太に堪えられず、あたしは俯いて裕太の手を握った。
お互いの手に力が入る。
「一緒に…行ったのに。俺は、中川を見失って…、俺は、中川を…助けられなかった…っ」
裕太の口許が苦し気に歪んだ。堪らなくなって、あたしは裕太を抱き締める。
小刻みに、裕太の肩が震えた。