ホタル
チチッと鳥が飛んだ。
残った音は何もない。
ただ驚いた顔の裕太だけが、あたしの目の前にあって。
「好きなだけここにいていいよ。好きなだけいなよ。何にも気にすることなんかない。二人だけで、ずっと暮らそ」
自分でもびっくりするくらい、冷静な声だったと思う。
別に勢いでそう言ったわけでも何でもない。本当に、そう思ったのだ。
世間も、社会も、もうどうだっていい。
わかってたはずだ。あたしには裕太が、裕太にはあたしが、何よりも必要だって。
それがどれだけいけないことだろうが、今はもう、どうでもいい。
「一緒に、いよう?」
裕太の視線が、次第に優しくなるのを感じた。
大人びた口許が、ゆっくりと穏やかな弧を描く。同じ微笑みを、あたしは返した。
朝日は穏やかにこの部屋に降り注ぎ、静かに、優しく、二人の罪を包む。
逃げたっていいじゃない。
例えそれが、殺那であっても。