ホタル



……………

さっきまで姿を見せなかった鳥は、今はマンションのベランダの縁にちょこんとその姿を現している。

ぎこちなく跳ねながら、その度にチチッと鳴く鳥は、二人だけの朝食に相応しく感じる。

「朱音、朝御飯食べる様になったんだね」

目玉焼きを食べ終えた裕太は、炭酸水を飲みながら言った。

「たまにね。大学に入って、朝に余裕ができたから」

本当は滅多に食べないのだけれど、今日はきちんと食べておきたかったから、とりあえずそう答える。

裕太が食べなかったらどうしようかと考えたが、裕太は綺麗に平らげてくれた。

部屋の中には、まだレモンの酸っぱい香りが満ちている。

その香りが煙草で打ち消される前に、あたしは口を開いた。

「ねぇ裕太」

カチャッと、食事が終わる音が響く。
裕太は顔をあげた。


「一緒に住もうか」



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