ホタル
…両親の寝室から、細い光が延びていた。
あたしはそっとその部屋に近付く。
鳴らない様に開けたドアの向こうで、お母さんがうつ伏せて寝ていた。
音をたてない様に、お母さんの側に近付く。
「…お母さん」
テーブルの上には、アルバムが開かれていた。
滅多に撮らない写真。
それでも中学に上がる頃までは、たまに撮っていた。
お母さんの手に握られていた写真をそっと手にとる。
いつの写真だろう。七五三か、何かだろうか。
真っ赤な着物を着たあたしが、はにかんだ様な笑顔を見せていた。
あたしの隣には裕太。
困った様な表情で、あたしの着物の裾を握っている。
二人の後ろには、若い両親が立っていた。
お母さんの手は、あたしの肩に触れていた。