ホタル
…家族は、あった。
ささやかな幸せは、確かにあったのだ。
何をどうしたら、こんなことにならなかったんだろう。
裕太を好きだと思う気持ちのままで、誰もが傷付かずにすむなんて、そんなの絶対にありえないの?
近くにあったカーディガンを、そっとお母さんの肩にかけた。
その写真をどうしようか迷った挙げ句、そっとお父さんの手帳に挟もうとする。
…手が、止まった。
切ないとか悲しいとか、そんな感情じゃない。
胸が締め付けられて、どうしようもなく苦しくて、あたしはようやく自分の犯した罪の大きさに気付いた。
お父さんの手帳には、同じ写真が既に挟まれていた。