ホタル


「例えばね、あたしと裕太が離れちゃって、時がたってお互い好きな人ができて、その人と結婚して、子どもができて…そんな未来が、あったとするでしょ?」

想像できなかった。
それでも必死に、話を続ける。

「もしそんな未来があったとしても、あたしは…あたしは、裕太が好きだと思う。裕太の幸せがあたしの幸せだって、きっとそう思える。その想いは…きっと誰も、傷付かない。だから…」

いつか思った。

誰かが、自分が傷付く愛は、本物の愛じゃない。

自分じゃない。相手の幸せを願える時に、本当の愛が生まれるんだって。


だから。



「裕太を愛してるって…そう言える様になったら、会いに来るから」




…今はまだ、言えない。

心の底で、裕太を求めてる。

裕太が他の人を好きになれば傷付くし、あたしだけを見ていて欲しいと願ってる。


でもそれは、愛じゃないから。

だからあたし達は、この気持ちを愛に変えなきゃいけない。


例えあなたが誰を好きでも、あたしはあなたの幸せを願える。


そう思えた時、きっとあたしは言える。

だから、それまでは。



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