ホタル
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あんまり寝れなかったせいか、瞼が重い。こんな事で眠れなくなるような弱い自分が嫌いだった。
重い足取りで階段を降りると下に梨華さんがいて、「おはようございます、お嬢様」と綺麗なお辞儀を見せてくれた。
あたしもなるべく明るく「おはよ」と返事をしたけど、空元気な事が伝わってしまった気がする。
キッチンに入ると、いつもの席でいつもの様に裕太がコーヒーを飲んでいた。
いつもそう。朝食は、コーヒーだけ。
「おはよ」
あたしに気付いた裕太は新聞から目を離す。あたしも精一杯の笑顔で「おはよ」と返した。
梨華さんはあたしにもコーヒーを淹れてくれて、その後すぐに庭の掃除に向かう。
ただっ広い朝のキッチンには、あたしと裕太しかいなくなった。
「......テスト、いけそう?」
「うん、余裕。今日、古文と数学だし」
「それ普通の子は嫌がる科目じゃない?」
「そう?俺は好きだけどな」