ホタル
「電話、誰?」
「あ、家です......」
「もしかして門限とか?」
「や、それはないですけど」
裕太は勘がいいから、絶対気付いた。どう思っただろう。焦ったのはまずかった。
「そっか、よかった。そろそろ戻ろう?」
あたしの気持ちなんかお構い無しにサクサク話をすすめる深見さんは、そのテンポのまま歩き始める。曇った表情のまま戻ることもできないので顔面の筋肉を引き締めた。
そうでもしなきゃ、不安が滲み出てしまうと思った。
何て思っただろう。
彼氏?友達?
突然切ったこと、どう思った?
「おーっ、遅かったじゃん!」
「何々、朱音ちゃんと翔いい感じなわけ?」
「2人で何してたんだよ~っ」
でも変に思ったなら電話かけ直すよね。
音沙汰ないって事は何も思わなかったのかな。
「別にそんなんじゃねぇって」
「またまたぁ!朱音ちゃん、こいつ、はなからめっちゃ朱音ちゃん狙いだから気を付けなよ~」
「余計なこと言うなってば!」
大体、あたしが誰とどこにいようが裕太にはどうでもいいことなのかもしれない。
電話してきたのだってまさみさんが気にしてたからだし、『姉』が彼氏といようが合コンしようが『弟』の裕太には関係ない。