ホタル
こんな事を気にするのは、裕太を『弟』と思えないあたしだけだ。
裕太はきっと、何とも思ってない。
「朱音ちゃん?」
はっとして顔を上げると、深見さんが覗き込む様にあたしを見ていた。
「大丈夫?酔った?」
「あ、いえ、大丈夫です」
耳にざわめきが戻ってきた。相変わらず英里と金井さんはいいムードで、他にも何組か満更でもない雰囲気のカップルができてる。
時計を見ると11時。いつの間にこんなに時間がたったのだろう。
「ちょっと時間が気になって......」
「え、門限ないんじゃなかったんだっけ?」
「うん、そうだけど」
携帯の履歴を見た。着信もメールもなし。わかってたけど。
落ちっぱなしのテンションを気にすることもなく、ふいに深見さんはあたしの側に寄ってきた。一瞬警戒し、座り直す。