ホタル


こんな事を気にするのは、裕太を『弟』と思えないあたしだけだ。

裕太はきっと、何とも思ってない。



「朱音ちゃん?」

はっとして顔を上げると、深見さんが覗き込む様にあたしを見ていた。

「大丈夫?酔った?」
「あ、いえ、大丈夫です」

耳にざわめきが戻ってきた。相変わらず英里と金井さんはいいムードで、他にも何組か満更でもない雰囲気のカップルができてる。
時計を見ると11時。いつの間にこんなに時間がたったのだろう。

「ちょっと時間が気になって......」
「え、門限ないんじゃなかったんだっけ?」
「うん、そうだけど」

携帯の履歴を見た。着信もメールもなし。わかってたけど。
落ちっぱなしのテンションを気にすることもなく、ふいに深見さんはあたしの側に寄ってきた。一瞬警戒し、座り直す。


< 64 / 326 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop