ホタル


「西っ」

切羽詰まった声があたしの背中を追いかける。思わずあたしは振り向いた。

二人の間にはそんなに距離はない。だからこそ彼の表情ははっきりと見てとれた。

「…平岡君?」

あたしの足下辺りを凝視したまま仁王立ちになった彼の頬は、夕日と同じくらいに赤く染まっている。夕日が染めているのではないことは言われなくてもわかってしまった。


「ごめん、嘘ついた」


真っ赤になった平岡君は申し訳なさそうに呟く。

「大介が俺に頼んだんじゃなくて、俺が大介に頼んだんだ。大介が部活で来れないってことにして、俺に行かせてくれないかって」

平岡君の視線が上がる。彼を見つめるあたしの視線と交わった。


「…きっかけが欲しかったんだ。西と話すきっかけが。俺…ずっと西のこと見てた。ずっと…好きだった」



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