ホタル



……………

英里の家からの帰り道は、予想以上に暑かった。夏が来るのかな、と感じる。

夜の闇が好きだ。全てを隠してくれるから。闇に溶けてしまいたかった。あたしも、あたしの想いも全て。塗りつぶせればいいのに、あたしの全てを。


何故そう思ったのかはわからない。わからないけど、何故か遠回りをして帰りたいと思ってしまった。携帯で確認しても時間はまだ8時。まさみさんが心配する時間じゃない。
爪先をいつもとは違う方向に向け、一歩を踏み出した。夏の入り口を感じさせる風が背中に吹く。









数分後、あたしはこの道を選んだことを死ぬほど後悔することとなった。




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