双子とあたし。
「けいーっ!頑張れ!」
薫ちゃんはコートを一望できるギャラリーの場所に向かいながら、けいちゃんに叫んだ。
けいちゃんは首に垂れてきた汗を手の甲で拭ってこちらをちらりと一瞬見た。
そしてそのまま、試合に集中する。
だけど、さっきのけいちゃんよりもなんだか笑顔が見られる。
それはきっと、『彼女』がいるという安心感なのだろう。
薫ちゃんは人を安心させることができるのだろう。
けいちゃんも、悠斗君も悠太君も、そして俺も…。
彼女の必死な所も緊張している所も、全て俺たちに安らぎを与えてくれる。
俺は薫ちゃんのそんな所が大好きだ。
薫ちゃんはけいちゃんのチーム(つまりは俺たちのクラス)が点を入れる度に腕を大きく挙げて飛び跳ねた。
「いいぞー!」
俺も負けじと声を張る。
「頑張れ。」
「英介くん、声小さいよ!もっと大きく!はい、頑張れー!」
俺は言われるがままに叫んでみた。
「頑張れー!」
「そうっ!それでいいの!」
薫ちゃんのにっこりとした笑顔に目を奪われる…――――。
彼女は今、俺だけに魅せてくれた。
けいちゃんでも、双子君でもないっ!
――――この俺に…。
そう思うと微笑まずにはいられなかった。