ラヴレター(仮)
壁に掛けられたコルクボードには雑多に貼られた写真が多数。映る顔ぶれはほとんど同じ。
ある一定の期間を濃縮するように密に撮られたそれらは、過去のあたし。
戻ることのできない、あたしがそこにいる。


無情にも機械音を告げる携帯電話を置いて、思い出しそうになる記憶を振り払うためにボードに布をかぶせて視界から外す。
見たくないのに、片付けられない。一番輝いていた思い出たちを埃に埋もれさせるのはさすがにできない。

感情に引きずられて右手が痛み出す。

「あたしってホント弱いなぁ」

またテレビから流れだした、Kishの新曲に乾いた笑いを零す。
今度は、リズムを小さく刻み、ハミングする。

喉の奥が痺れるような感覚に、体を丸め、ぎゅっと自分を抱きしめた。
< 8 / 22 >

この作品をシェア

pagetop