【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
見慣れた涼経営のBOTCH。
入り口前には翔の姿が既にあった。
翔を視界に捉えただけで、顔が緩む気がしたけれど、そこはまぁ仕方ないと思う。
私だって女。
好きな人に久しぶりに会うとなれば、心だって躍るわけで
榎本さんに「ニヤけんな」なんて言われたけど、無視した。
ゆっくりと車が停止して『ありがとう』を告げて車から降りれば、くいっと引かれた腕。
ふわりと私を包んだ香りは私の大好きな匂い。
シトラス。
翔に抱き締められても、暑いとか、汗が…とかは気にはならなかった。
だってここが私の居場所。
落ち着ける所なんだから。
「チッ…テメーら外でイチャつくな」
榎本さんは店に早く入れと言わんばかりに、シッシッと手を払う。
それに翔が「言われなくてもわかってんだよ」毒づく。
「…ガキはさっさと家帰れよ」
「おっさんは1人寂しく家帰れよ」
…仲悪いな。
シニカルな笑みを浮かべたままの2人に、思いながらも苦笑いを浮かべるだけの私は口を挟まない。
多分だけど、本当に仲が悪いならこの2人は話もしないと思うから。
性格からして、そんな気がした。