【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
だけど意外にもその時はすぐにやってきた。
ピンポーン
部屋に機械的なインターフォンが鳴り響く。
膝に埋めていた顔をパッと上げ、パタパタとスリッパを鳴らしながら、ドアを開けた。
『翔!』
言おうと思っていた言葉も、杏里ちゃんの事も、全てが吹き飛び目の前の人物に抱き付いた。
だって翔が両手を広げたから。
そのままドアはパタンと閉まり、ぎゅうっと腕に閉じ込められる。
鼻を掠めるのはあのシトラス。
私の大好きな香り。
「仁菜…俺…」
胸に耳をあてればダイレクトに響く愛しい声。
その声は少し暗い。
言いたい事がある。
聞きたい事がある。
知りたい事がある。
だけど今は、少しこの幸せに浸らせて。
『翔、会いたかった』
言えば頭に置かれる手。
髪を梳く様に撫で、その腕に頭をもたげた。