【完】白い花束~あなたに魅せられて〜
「…仁菜大丈夫か?」
『………別に』
びしょ濡れで現れた私に怪訝な視線を投げかける目の前の人は、部屋の奥に慌てて消えたかと思えば、ふかふかのバスタオルで私の滴る水滴を取り除いてくれた。
『…今日は、疲れた。泊まってもいい?』
私の質問に一瞬考える仕草をした目の前の彼は
「……あぁ。けど、親父今日帰れなくなったらしーぞ?」
そう言って私をバスルームまで連れて行った。
『…ふーん。自分が呼び出したくせにね?…』
その言葉にくすりと笑った涼は「あの人も忙しいんだよ」と一緒に肯定してはくれなかった。
『……ねぇ涼、出て行ってくんない?』
バスルームに連れて来てくれたのはいいんだけど、ずっと目の前にいたら服脱げない。
ぺたりと張り付く髪の毛と服に身体の体温を根こそぎ奪われる。
「お前さぁ、俺のことはお兄様って呼べよな」
早くお風呂に入りたいのに更に言葉を紡ぐ涼に『無理』と即答で一言。