君とタンポポ
「君と同じで琴賀さんとは階が
離れていて関わる機会がないけど、
昔家庭教師をしていてね。
その時の教え子なんだよ琴賀さんは。」
エレベーターは1階に到着し、
3人は降りる。
「琴賀さんはいい子だから
仲良くしてくれないかい、海屋くん。」
「は、はあ…。」
先ほどと違い重い空気はなく
いつの間にか渡鉦のペースに
乗せられていた。
稀菜は渡鉦の態度にムッとし
「渡鉦さん、そんなふうに私を
気にしていると奥さんが知ったら
怒って嫉妬されますよ。」
渡鉦はその言葉にクスリと笑う。
「ああ、それは困るな気をつけるよ。」
渡鉦はずっと持っていた本をしまう。
外に出ると眩しい太陽が目にはいる。
光が反射し、渡鉦の左の薬指にはめた
指輪が光る。
「それじゃあ、また会う時にでも。」
渡鉦はそう言うと2人の前から
去っていった。
「じゃあ、私もこれで。」
稀菜は渡鉦の姿が見えなくなると
海屋など見向きもせず、さっさと歩きだす。
海屋は何も言わず深いため息を吐いた。
あ~あ、あんな
女助けなければよかったよ…
これだから女ってのは
そんな事を考えながら海屋は稀菜とは
違う道を進んでいった。