制服の中
先生は楽しそうに話をする人。
留学先での出来事や、誤った英語で誤解をされた話、外国人の友達も多いようだ。
気のせいだとは思っていたけれど、先生と授業中よく目が合う。
単に目を付けられているだけかと思っていた。決して授業態度はよくない方だったのもあるから。

それを、友人ら第三者に指摘されると、どうも意識をしてしまう。

目が合うというのは、私も見ているからだ。見なければいい。
そう思い、あえて先生の目を見ないようにしてみたが、視線を感じる事が多かった。
余所見をして、窓の外の校庭を眺めていたり、教科書から顔を上げたとき、フと気を緩めたとき、どんなときでも、必ず先生は私を見ていた。バッチリ目が合う。

最初は「よく自分を見ている先生」に警戒をした。
私、別に手紙書いて回したりしてないのに。何でそんなジッと見てくるの。

たまたま日直か何かで職員室へ行ったとき、先生が応対してくれた事があった。
ついでに言ってみる。「先生、私何かしましたか?」。

みなまで言ってないのに、先生は分ったのか。
日誌をもらって、息苦しい職員室を出ようとした時、先生は小さい声でハッキリ言った。

「見ていたいから」


私はファンクラブへは属さなかった。ある意味、抜け駆け。
群れることが成功に繋がるなんて、全く思わなかった。
そもそも、まだ16歳。先生とどうなりたいなんて、期待はしなかった。

芸能人を追っかけるようなファン心理とは違う。
そんなのと一緒にされたくない。


私は、本気で、先生が好きだったから。
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