不器用な僕等の唄を

一回教室に戻って、荷物を持ってこようとした。

雪比良に何も言われなかった。

それを期待していた筈なのに、少し落胆する自分がいる。

忘れてるか冗談だったんだ、きっと。
それくらいの口約束。

長くいたって発展しないものはしないし、するものはする。

紘波は渡り廊下で待っているらしく、荷物を持って歩き出す。

不意に窓の外に目を向けた。

「…………アリガトウ。」

サヨナラもバイバイも、キライもスキも違う気がした。

見える正門前に阿久津サンと一緒の雪比良の姿。

簡単じゃないけど割り切ってしまえば、どうにかなるはずだろう。



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