ティーン・ザ・ロック
「あの…杉澤君…」
机の中から次に使う教科書を取り出している彼。声をかけると、一瞬動きを止めた後、こちらを見ずに『何』とだけ返して来た。
「えっと…さっきはありがとう。教えてもらえなきゃ、きっともっと恥かいてた」
笑顔で礼を言うと、彼はチラリとこちらを見る。少し驚いた様な表情だった。
だが、その少しの変化も僅かの時間で、元の無表情に戻ってしまう。
「そう…」
二度目の返答もまた、一言だけだった。
そのぶっきらぼうな態度に思わず眉根を寄せる。
普通、もっとこう…好意的でなくても、笑顔位見せてくれるものじゃないの…?
腹の中ではイライラしつつ、なるべく当たり障りのない様な言葉を選んで見た。
「…あの、あたし、何か気に障る事でもした?」
あたしだって文句を言えるほどの度胸は無いが、下手に出て態度を伺う事は出来る。
さあ、なんて答える?
嫌いだから? 委員長として頼りないから?
彼に面と向かって言える度胸があるのなら、その時はあたしも怯まず文句を言ってやろう。
そう思ったのだが…。
彼の口から出た言葉は、あたしの予想の範疇を大きく外れていた。
「……あまり僕と話さない方が良いよ」
彼は突き放すようにそう言うと、一人で教室を出て行ってしまう。
逃げる様に去っていく彼の後姿を見つめながら
あたしは、あまりの衝撃に その場から一歩も動けなくなっていた。