ハルジオン。
「ふんッ……オジサンなんかその辺でのたれ死んじゃえばいいんだ!」

アキトは踵を返し、暖かい木漏れ日が差し込む森の中をずんずんと足早に歩いく。

「おい、待てよ」

その背中を追いかけながら、達也はアキトの身なりに目を留めた。

よれよれの服、

寸足らずで穴の開いたジーンズ、

薄汚れた靴……

生意気な口ぶりといい、態度といい、昔の達也にどこか似ている。

おそらくあのトランプは、優しかった頃の母親がくれた物なのだろう。

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