ハルジオン。
達也は立ち止まり、悔しそうに揺れるアキトの背中に向かって声を掛けた。

「分かるさ」

「……?」

アキトの足が止まった。

「俺も似たようなもんだったから」

「……は?」

「だから、分かるんだよ」

達也はアキトに近づき、華奢な肩をポンと叩いた。

「さ、行くか」

「…………ふんッ」

アキトはぷいとそっぽを向き、再び森の中を歩き出した。

その足並みが、少しだけゆっくりになったような気がした。

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