ハルジオン。
「……おい」

と呼んだところで相変わらず返事はない。

「コラ」

「……何?痛てッ」

達也は煩わしそうに振り返ったアキトの頭をグリグリと拳で押さえつけ、「腹減った」と横柄に訴えた。

「何か食いモンとかないのか?」

「ないよ」

「はあ?」

にべもない返事に、達也はアキトの顔を覗き込んだ。

「ないってお前、じゃあ夜まで飲まず食わずで森の中をほっつき歩くのか?」

「水なら」

ほら、と言ってアキトが指さした先に、細々と流れる小川が見えた。

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