ハルジオン。
「どうだ、アキト」

尋ねても返事はない。心なしかアキトの背中が苛立っているようにも見える。

夕方くらいから、アキトは急かされるように早足になった。

何を焦ってるんだ?

足元の枯葉を蹴り上げながら、達也は首を傾げた。

アキトがこの森に来たのは、これで三度目だと言った。

叶えたい望みも特にないと。

なら、静かに強制送還されるのを待っていればいい。

焦る必要などどこにもないのだ。

単に夜が怖いのか、あるいは……

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